健康診断で「心電図の異常」「心雑音」「心拡大」などを指摘され、心エコーを勧められることがあります。一方で、「心電図を受けたのに、なぜ心エコーも必要なの?」「同じ心臓の検査ではないの?」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。
心電図は心臓を動かす電気信号を記録し、心エコーは超音波で心臓の形や動き、血液の流れを観察します。それぞれ得意な情報が違うため、症状や診察所見に応じて組み合わせることがあります。この記事では、心臓エコーと心電図の違い、心エコーで分かること、検査の流れ、心エコー検査の費用の目安を分かりやすく解説します。
心臓エコーと心電図の違いを先に確認

| 比較する点 | 心臓エコー(心エコー) | 心電図 |
|---|---|---|
| 主に見るもの | 心臓の形・動き・血流 | 心臓の電気信号 |
| 得意な評価 | 心臓の大きさ、壁の動き、弁、ポンプ機能、血流など | 脈の乱れ、伝導異常、虚血を疑う変化など |
| 検査方法 | 胸にゼリーを塗り、プローブを当てて観察 | 胸・手足に電極を付けて記録 |
| 一般的な検査時間 | 標準的な検査では20分前後が目安 | 短時間で記録できる |
| 放射線被ばく | なし | なし |
心電図が正常であっても、弁膜症や心筋の厚さ、心臓の動きなどに変化が見つかることがあります。逆に、心エコーで形や動きに大きな異常がなくても、発作的な不整脈は別の心電図検査で捉える必要があります。一方の検査がもう一方を完全に代用するものではありません。
心電図は心臓の「電気」を調べる検査

心臓は、内部で生じる規則的な電気信号によって収縮と拡張を繰り返しています。心電図は、この電気活動を波形として記録する検査です。胸と手足に電極を付け、心拍数やリズム、電気信号が伝わる時間や方向などを確認します。
一般的な安静時心電図は、その場で記録した短い時間の心拍を見ます。不整脈、心筋梗塞や狭心症を疑う変化、心肥大を示唆する所見などを確認できますが、検査中に発作が起きていなければ異常を捉えられないことがあります。その場合は、24時間以上記録するホルター心電図や、運動時の変化を見る負荷心電図などを検討します。
症状に合わせて心電図の種類を選びます
診察室で行う安静時心電図は、検査時点の電気活動を記録します。毎日ではない動悸や一時的な脈の乱れを調べるときは、日常生活中の心電図を長時間記録するホルター心電図が役立つことがあります。歩行や運動で胸痛が出る場合には、運動負荷心電図などを検討します。どの検査が適切かは、症状が出る頻度、持続時間、きっかけ、失神の有無などで変わります。
動悸を感じた日時、何をしていたか、何分続いたか、胸痛や息切れを伴ったかをメモして受診すると、検査を選ぶ手がかりになります。スマートウォッチなどの記録があれば参考になる場合もありますが、それだけで診断を確定することはできません。
心電図で「異常」と言われても、病気が確定したとは限りません
健診の心電図は、症状がない段階で異常の可能性を拾い上げる検査です。体格、緊張、電極の位置などが波形に影響することもあり、判定だけで病名が決まるわけではありません。過去の心電図との比較、症状、聴診、血液検査、心エコーなどを組み合わせて判断します。
心エコーは心臓の「形・動き・血流」を見る検査
心臓エコーは、人の耳には聞こえない高い周波数の音を胸から送り、その反射を画像にする検査です。動いている心臓をリアルタイムで観察できることが大きな特徴です。標準的な経胸壁心エコーでは、胸の表面からプローブを当てます。
心臓は4つの部屋と4つの弁から成り、血液を一定方向へ送り出しています。心エコーでは、心臓の各部屋の大きさ、心筋の厚さや動き、弁の開閉、血液の流れる方向や速度などを確認します。ドプラ法を使うと、血液の流れを色や波形で表示できます。
心エコーで分かる主なこと
- 心臓の大きさ:心房や心室が拡大していないかを確認します。
- 心筋の厚さと動き:心筋が厚くなっていないか、動きが弱い部分がないかを見ます。
- 血液を送り出す力:左心室の収縮機能を、駆出率など複数の指標で評価します。
- 心臓弁の状態:弁が開きにくい狭窄や、閉じにくく血液が逆流する状態を確認します。
- 血流と圧の推定:血流速度などから、心臓内の圧や肺高血圧の可能性を評価します。
- 心臓の周囲:心臓を包む膜の内側に液体がたまっていないかを確認します。
心エコーだけで、胸痛や息切れの原因がすべて分かるわけではありません。肺や肋骨、体格などによって一部が見えにくいことがあります。病気が疑われる場合は、心電図、胸部X線、血液検査、CT、MRI、冠動脈の検査などを組み合わせます。
「駆出率が正常」だけでは判断できません
心エコーの結果でよく目にする駆出率は、左心室に入った血液のうち、一回の収縮でどの程度を送り出したかを示す指標です。心臓の収縮機能を考えるうえで重要ですが、駆出率が保たれていても心不全が起こる場合があります。心臓が広がりにくい状態、弁膜症、右心系の負担などは別の指標も必要です。
結果説明では、駆出率の数字だけでなく、心房・心室の大きさ、心筋の厚さ、弁の状態、拡張機能、推定される圧、症状との関係を確認しましょう。前回の検査値と比べて変化しているかも大切な情報です。
心エコーで見つかることがある主な病気
心臓弁膜症
心臓の弁が十分に開かない「狭窄」や、閉じたときに血液が逆流する「閉鎖不全」を評価します。初期には症状がないこともありますが、進行すると息切れ、むくみ、胸痛、失神、疲れやすさなどにつながります。診察で心雑音を指摘されたとき、心エコーが重要な検査になります。
心不全・心筋症
心不全は、心臓のポンプ機能や拡張する力などが低下し、身体が必要とする血液を十分に送りにくくなる状態です。心筋の動きが弱いタイプだけでなく、血液を送り出す割合が保たれていても、心臓が硬く広がりにくいタイプがあります。心エコーは心臓の形や機能を整理するために使われます。
心筋梗塞・虚血性心疾患を疑う変化
心臓の筋肉への血流が不足したり、心筋梗塞を起こしたりすると、心臓の壁の一部が動きにくくなることがあります。心エコーは壁運動を確認できますが、心エコーが正常だから狭心症を完全に否定できるわけではありません。症状や心電図、血液検査などを合わせて評価します。
高血圧による心臓への負担
高血圧が長く続くと、強い圧に対抗するため心筋が厚くなることがあります。症状がなくても心臓に負担がかかっている場合があるため、血圧管理の状況と合わせて心臓の状態を確認します。
心電図と心エコーを両方受けるのはなぜ?
動悸がある方を例にすると、心電図では不整脈があるか、電気信号に異常がないかを調べます。心エコーでは、不整脈の背景に弁膜症や心筋症、心房・心室の拡大などがないかを確認します。息切れの場合も、心電図の変化と心臓のポンプ機能・弁・血流を組み合わせることで、原因を整理しやすくなります。
検査を多く受ければよいというものではありません。症状の内容、診察所見、健診結果、既往歴をもとに、必要な検査を医師が選びます。以前の心電図や心エコー結果があれば、変化を比較するため受診時に持参してください。
心エコーを相談したい症状・健診所見
- 階段や坂道で息切れしやすくなった
- 動悸、脈の乱れ、胸の違和感がある
- 足のむくみ、急な体重増加、横になると苦しいなどの症状がある
- 診察で心雑音を指摘された
- 健診で心電図異常や心拡大を指摘された
- 高血圧が長く続いている
- 弁膜症、心筋症、心不全などの経過観察中である
- 心臓の病気の治療効果を確認する必要がある
強い胸痛、冷汗、呼吸困難、意識が遠のく感じなどがある場合は、通常の検査予約を待たず救急受診が必要なことがあります。症状が強いときは速やかに救急要請を含めて対応してください。
受診時に伝えておきたいこと
- 症状が始まった時期、続く時間、起こりやすい場面
- 胸痛、息切れ、動悸、むくみ、失神の有無
- 家庭血圧と脈拍の記録
- 現在飲んでいる薬とサプリメント
- 過去の心電図・心エコー・健診結果
- 心臓病や突然死の家族歴
心エコー検査はどのように進む?
- 問診・診察:症状、健診結果、持病、服薬、これまでの心臓病を確認します。
- 検査の準備:上半身の衣服を調整し、検査着などを使用して検査台に横になります。
- プローブを当てる:胸にゼリーを塗り、肋骨の間から心臓を観察します。
- 体位や呼吸を調整:左側を下にした姿勢になったり、息を止めたりする場合があります。
- 画像・血流を記録:複数の方向から心臓の形、動き、弁、血流を記録します。
一般的な心エコーの検査時間は約20分が目安ですが、確認する項目や画像の見え方によって前後します。通常は食事制限がなく、普段の薬も指示がなければ継続します。ワンピースや胸元を出しにくい服は避け、上下が分かれた服装が便利です。
心エコー検査の費用はいくら?
日本超音波医学会の一般向け情報では、標準的な経胸壁心臓超音波検査を保険診療で受ける場合、3割負担の方で約2,640円が目安とされています。これは基本の心エコー検査分の目安であり、初診料・再診料、診察、血液検査、心電図などの費用は別途かかります。
| 区分 | 費用を考えるときのポイント |
|---|---|
| 保険診療 | 症状や診察所見があり、医師が必要と判断した場合。自己負担割合や追加検査で窓口負担が変わります。 |
| 健診・希望による検査 | 症状がなく健診やオプションとして受ける場合は、自費診療となることがあります。 |
| 特殊な心エコー | 経食道心エコーや負荷心エコーなどは、標準的な経胸壁検査とは費用・準備が異なります。 |
医療費は診療報酬の改定や検査内容によって変わります。実際の心エコー検査費用は、予約時または受診時にご確認ください。千里クリニックで行う検査の種類や保険適用についても、医師が診察したうえでご案内します。
費用だけを理由に必要な検査を先延ばしにすると、症状の原因を確認する時期が遅れることがあります。負担額が心配な場合は、検査を受ける前に「何を調べる検査か」「ほかに予定される検査はあるか」「おおよその窓口負担はいくらか」を受付や診察時に確認しておくと安心です。
よくある質問
Q. 心エコーは痛いですか?
針を刺す検査ではなく、通常は強い痛みを伴いません。画像を見やすくするため、プローブを胸にやや強く当てることがあります。痛みがある場合は検査中に伝えてください。
Q. 放射線被ばくはありますか?
ありません。心エコーは超音波を利用し、X線を使いません。必要に応じて繰り返し状態を確認しやすい検査です。
Q. 心電図が正常なら心エコーは不要ですか?
一律には判断できません。心電図と心エコーでは確認する情報が異なります。心雑音、息切れ、むくみ、心拡大などがあれば、心電図が正常でも心エコーを検討することがあります。
Q. 心エコーで狭心症は分かりますか?
心筋の動きに変化があれば手がかりになることがありますが、安静時の心エコーだけで狭心症を完全に診断・否定することはできません。症状に応じて心電図、負荷検査、CTなどを組み合わせます。
Q. 検査結果の数値は自分で判断できますか?
駆出率などの数値は重要な指標ですが、一つの値だけでは判断できません。測定条件や体格、弁の状態、拡張機能、症状などを含めて医師が評価します。
津市で心エコーをご検討の方へ
心電図は心臓の電気信号、心エコーは心臓の形・動き・血流を調べます。それぞれの役割を理解して必要な検査を受けることが、症状の原因を整理し、適切な治療や経過観察につなげる第一歩です。
三重県津市の千里クリニックでは、症状や健診結果、聴診、血圧などを確認し、心電図や心エコーの必要性を判断します。「健診で心電図異常を指摘された」「最近息切れしやすい」「心エコー検査の費用や流れを知りたい」という方は、診察時にご相談ください。
参考:日本超音波医学会「心臓 超音波検査」「超音波検査の費用について<心臓>」等。本記事に記載した費用は一般的な目安であり、実際の窓口負担を保証するものではありません。

