「買い物へ出かけると、途中からふくらはぎが張って痛くなる。でも、立ち止まって数分休むと楽になり、また歩ける」
このような症状を、年齢や運動不足のせいだと思っていませんか。歩いたときに足が痛み、休むと軽くなり、再び歩くとまた同じように痛む。この“繰り返し”は、足へ血液を送る動脈が狭くなっているサインかもしれません。
動脈硬化によって足の動脈が狭くなったり詰まったりする病気を、閉塞性動脈硬化症(ASO)と呼びます。現在のガイドラインでは、下肢閉塞性動脈疾患(LEAD)や末梢動脈疾患(PAD)という名称も使われています。
閉塞性動脈硬化症で大切なのは、足の痛みだけの病気ではないことです。足の血管に動脈硬化が見つかった場合、心臓や脳など、全身の血管にも動脈硬化が進んでいる可能性を考える必要があります。この記事では、ふくらはぎが痛む仕組み、ほかの病気との見分け方、ABI検査の役割、受診後の流れを分かりやすく説明します。
歩くと痛み、休むと治る「間欠性跛行」
閉塞性動脈硬化症の代表的な症状が、間欠性跛行(かんけつせいはこう)です。
安静にしているとき、足の筋肉が必要とする酸素はそれほど多くありません。しかし歩き始めると、ふくらはぎなどの筋肉は多くの酸素を必要とします。動脈が狭くなっていると、必要な量の血液を十分に届けられず、筋肉が酸素不足になって痛み、締め付け、だるさ、重さなどを感じます。
立ち止まると筋肉が必要とする酸素量が減るため、数分で症状が軽くなります。再び歩けば酸素が不足し、また痛みます。この「歩くと出る・休むと引く・また歩くと出る」という再現性が重要な手がかりです。
痛みはふくらはぎに出ることが多いものの、血管が狭くなっている場所によっては、お尻、太もも、足の裏などに症状が現れることもあります。

受診時に伝えていただきたいこと
診察では、単に「足が痛い」と伝えるだけでなく、次の点をできる範囲で教えてください。
- いつごろから始まったか
- 右足、左足、両足のどこに出るか
- どのくらい歩くと症状が出るか
- 坂道や階段で強くなるか
- 立ち止まるだけで治るか、座る必要があるか
- 痛み以外に、冷え、しびれ、色の変化があるか
- 足の傷が治りにくくなっていないか
「いつも同じ交差点のあたりで痛くなる」「平地では大丈夫だが、坂道では早く痛む」といった具体的な情報が、原因を考える助けになります。
ふくらはぎの痛みは、すべて血管の病気とは限りません
歩行時の足の痛みは、腰部脊柱管狭窄症、関節の病気、筋肉の障害、静脈の病気などでも起こります。特に、閉塞性動脈硬化症による血管性跛行と、腰部脊柱管狭窄症による神経性跛行は、どちらも中高年の方に多く、両方が併存することもあります。
| 比較する点 | 血管性跛行でみられやすい特徴 | 神経性跛行でみられやすい特徴 |
|---|---|---|
| 症状が出るきっかけ | 一定距離の歩行や坂道 | 立っていることや歩行 |
| 症状が出る場所 | ふくらはぎが多い | お尻から足にかけての痛み・しびれ |
| 楽になる条件 | 立ち止まって休む | 座る、前かがみになる |
| 姿勢との関係 | 比較的少ない | 前かがみで軽くなることがある |
| 足の所見 | 脈が弱い、冷たい、色が違うことがある | 血流の所見は通常みられない |
これは一般的な傾向であり、症状だけで診断することはできません。問診、足の診察、ABIなどの客観的な検査を組み合わせて判断します。
閉塞性動脈硬化症(ASO)になりやすい方
閉塞性動脈硬化症は、足だけに突然起こる独立した病気ではなく、長年の動脈硬化を背景に発症します。特に注意したいのは、次のような方です。
- 喫煙中、または長い喫煙歴がある
- 糖尿病がある
- 高血圧がある
- 脂質異常症(高脂血症)がある
- 慢性腎臓病がある、または透析治療を受けている
- 心筋梗塞、狭心症、脳梗塞などの既往がある
- 高齢で、歩く機会が以前より減っている
なかでも喫煙と糖尿病は重要な危険因子です。糖尿病がある方では、神経障害によって痛みを感じにくくなり、血流が低下していても典型的な間欠性跛行が現れないことがあります。ふだんあまり歩かない方も、症状が出る距離まで歩いていないため、病気に気づきにくいことがあります。
足の病気をきっかけに、全身の血管を見直す
閉塞性動脈硬化症は、足の痛みを改善するだけで終わる病気ではありません。動脈硬化は全身の血管で進むため、足の動脈に病変がある方では、心臓の冠動脈や脳へつながる血管にも病変が合併しやすいことが知られています。
日本循環器学会・日本血管外科学会合同の「2022年改訂版 末梢動脈疾患ガイドライン」では、日本から国際登録研究へ参加した下肢閉塞性動脈疾患627例のうち、30%が冠動脈疾患、21%が脳血管疾患を合併し、7%は両方を有していたと報告されています。
この数字は、閉塞性動脈硬化症を「足だけの問題」と考えてはいけない理由を示しています。足の症状を入り口に、血圧、血糖、脂質、喫煙状況を確認し、必要に応じて心臓や頸動脈なども評価することが、心筋梗塞や脳梗塞の予防につながります。
ABI検査で何が分かるのか
ABI(Ankle Brachial Index:足関節上腕血圧比)は、足首の収縮期血圧を上腕の収縮期血圧で割った値です。
血管の硬さを示す「血管年齢」とABIの違いについては、第1回「血管年齢」が数分でわかる!ABI検査とは?で詳しく解説しています。
ABI = 足首の収縮期血圧 ÷ 上腕の収縮期血圧
健康な状態では、仰向けで測った足首の血圧は腕と同程度か、やや高くなります。足へ向かう動脈が途中で狭くなっていると、その先の足首の血圧が低くなります。この性質を利用し、足の動脈の狭窄や閉塞を調べます。
検査では、仰向けになって両腕と両足首に血圧計のカフを巻きます。針や造影剤は使用しません。カフが膨らむと一時的な締め付けを感じますが、測定そのものは短時間です。

ABIの一般的な参考範囲
| ABIの値 | 一般的な受け止め方 |
|---|---|
| 1.00~1.40 | 一般的な正常域 |
| 0.91~0.99 | 境界域 |
| 0.90以下 | 足の動脈の狭窄・閉塞が疑われる |
| 1.40より高い | 血管の石灰化などで正しく圧迫できていない可能性 |
結果は左右の足ごとに確認します。値だけで診断を確定するのではなく、脈波の形、左右差、症状、足の診察所見、持病などを合わせて医師が判断します。
ABIが正常でも、症状を無視しないでください
間欠性跛行に合う症状があっても、安静時のABIが正常域となる場合があります。ガイドラインでは、間欠性跛行があり、安静時ABIに異常がない場合には、運動後ABIなどの追加評価が推奨されています。
また、糖尿病、慢性腎臓病、透析治療中の方、ご高齢の方では、動脈の石灰化によりABIが実際より高く出ることがあります。症状があるのに「数値が正常だから大丈夫」と自己判断せず、医師へ症状を伝えることが大切です。必要に応じて、TBI(足趾上腕血圧比)、血管超音波、CT・MRIなどが検討されます。これらの検査が必要な場合は、対応可能な医療機関へご紹介します。
千里クリニックを受診したときの流れ
千里クリニックでは、ABIの数字だけを見るのではなく、症状と全身の動脈硬化リスクを合わせて評価します。
1.症状と生活背景を確認します
痛む場所、歩ける距離、休むと治るまでの時間、喫煙歴、高血圧・糖尿病・脂質異常症の有無、心臓病・脳血管疾患の既往などを伺います。
2.足を診察します
足の付け根、膝の裏、足の甲などの動脈の拍動、左右の温度差、皮膚の色、乾燥、傷、爪の変化などを確認します。腰や関節、神経の病気が疑われる場合は、その可能性も考えます。
3.必要に応じてABI・脈波を測定します
ABIで足の血流を、同時に測定される脈波伝播速度で血管の硬さを評価します。検査結果は、血圧や血液検査などと合わせて説明します。
4.全身の危険因子を整理します
血圧、LDLコレステロール、中性脂肪、血糖・HbA1c、腎機能、喫煙などを確認します。必要に応じて、頸動脈エコーなどでほかの血管の状態を調べます。
5.治療と次の検査を決めます
危険因子の管理、禁煙、薬物療法、医師の指導に基づく運動療法などを検討します。症状が強い場合、安静時にも痛む場合、足に治りにくい傷がある場合、血行再建術を含む専門的な評価が必要な場合は、速やかに連携医療機関へご紹介します。
治療の目標は「歩ける距離」と「将来の血管」の両方を守ること
間欠性跛行の治療では、足の症状を軽くして生活の質を保つことと、心筋梗塞や脳梗塞を防ぐことの両方が重要です。
- 禁煙する
- 高血圧、糖尿病、脂質異常症を適切に治療する
- 医師が必要と判断した薬を継続する
- 足の状態を毎日確認する
- 医師の指導のもとで歩行運動を行う
ガイドラインでは、間欠性跛行に対する初期治療として監督下運動療法が推奨されています。ただし、安静時にも足が痛む方、足に傷や潰瘍がある方、心臓や呼吸器の病気がある方などは、自己流で歩行量を増やすと危険な場合があります。まず診断を受け、ご自身に合った方法を医師と相談してください。
この症状は、待たずに受診してください
徐々に起こる間欠性跛行とは別に、足の動脈が急に詰まる「急性下肢虚血」があります。次のような変化が突然現れた場合は、通常の外来予約を待たず、速やかな医療機関への連絡・受診が必要です。
- 足が突然、強く痛み始めた
- 片足が急に白っぽく、または紫色になった
- 片足だけ急に冷たくなった
- 足の感覚が鈍い、しびれが急に強くなった
- 足指や足首を動かしにくい
急性下肢虚血では、短時間のうちに神経や筋肉へ取り返しのつかない障害が生じることがあります。「朝まで様子を見る」「歩いて確かめる」といったことはせず、救急受診を含めて速やかに対応してください。
また、急な変化ではなくても、安静時や夜間にも足が痛む、足の傷が治らない、足先が黒くなってきた場合は、重い血流障害の可能性があります。早めにご相談ください。
よくある質問
Q.こむら返りとの違いはありますか?
こむら返りは筋肉が急に強く収縮する症状で、夜間や安静時にも起こります。閉塞性動脈硬化症では、歩行など一定の運動で症状が出て、休むと軽くなることが特徴です。ただし症状だけで完全に区別することはできません。
Q.痛みが片足だけでも検査は必要ですか?
閉塞性動脈硬化症は片足に強く現れることがあります。左右のABIや脈、温度に差がないかを確認する意味がありますので、片足だけでもご相談ください。
Q.整形外科へ行くべきか、内科へ行くべきか迷います。
歩くと症状が出て休むと治る方、高血圧・糖尿病・脂質異常症・喫煙歴がある方、足の冷えや傷の治りにくさがある方は、血流の評価をご相談ください。腰痛や姿勢による変化が強い場合は整形外科的な評価も必要です。両方が併存することもあるため、どちらか一方だと決めつけないことが大切です。
Q.ABI検査の前に食事制限は必要ですか?
通常、採血のような絶食は必要ありません。ただし直前の喫煙、激しい運動、カフェインなどは血圧や脈波へ影響することがあります。予約時に案内がある場合は、その指示に従ってください。
Q.ABI検査が正常なら、もう受診しなくてよいですか?
症状が続く場合は、安静時ABIが正常でも追加評価が必要になることがあります。腰や関節など別の原因を調べる必要もあります。検査値と症状を切り離さず、医師の説明に従ってください。
津市で「歩くとふくらはぎが痛む」とお悩みの方へ
「少し休めば歩けるから」と我慢しているうちに、外出を避け、歩ける距離が短くなってしまう方がいます。けれど、歩行時のふくらはぎの痛みは、足の血流だけでなく、全身の血管を見直すきっかけになる症状です。
三重県津市河芸町の千里クリニックでは、ABI・脈波伝播速度の測定に対応しています。歩くと足が痛む、足の冷えや左右差がある、健診で動脈硬化を指摘された、高血圧・糖尿病・脂質異常症があり血管が心配、といった方はご相談ください。
症状、診察、検査結果を一緒に見ながら、生活習慣の改善、持病の治療、追加検査、専門医療機関との連携など、次に必要な一歩を考えていきます。
参考資料・医療上の免責事項
※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断や治療に代わるものではありません。症状や検査値の解釈、治療方針は、既往歴やほかの検査結果を含めて医師が判断します。気になる症状がある場合は自己判断せず、医療機関へご相談ください。突然の強い足の痛み、色や温度の急な変化、感覚障害、運動麻痺がある場合は、速やかに医療機関を受診してください。

