「家族からいびきがうるさいと言われる」「夜中に何度も目が覚める」「しっかり寝たはずなのに、昼間に強い眠気がくる」。こうした悩みを、年齢や疲れのせいだと思って見過ごしていませんか。
その背景に、眠っている間に呼吸が止まったり浅くなったりを繰り返す「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」が隠れていることがあります。睡眠時無呼吸症候群は、本人が寝ている間に起こるため自分では気づきにくく、受診のきっかけをつかみにくい病気です。この記事では、睡眠時無呼吸症候群の主な症状、なりやすい人の特徴、ご自宅でできるセルフチェック、受診の目安を分かりやすく解説します。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは?

睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に10秒以上呼吸が止まる「無呼吸」や、呼吸が浅く弱くなる「低呼吸」を繰り返し、日中の眠気などの症状につながる病気です。英語の Sleep Apnea Syndrome の頭文字から「SAS(サス)」とも呼ばれます。
多くは、眠っている間にのどの奥(上気道)が狭くなったりふさがったりして起こる「閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)」です。このほか、脳から呼吸の指令がうまく出ないことで起こる「中枢性睡眠時無呼吸」があり、心不全などの病気と関係することがあります。
重症度は「AHI(無呼吸低呼吸指数)」で判断します
検査では、睡眠1時間あたりに無呼吸と低呼吸が何回起きたかを示す「AHI(無呼吸低呼吸指数)」を測定します。日本呼吸器学会の「睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020」では、成人の閉塞性睡眠時無呼吸の重症度を次のように分類しています。
| 重症度 | AHI(1時間あたりの無呼吸・低呼吸の回数) |
|---|---|
| 軽症 | 5以上15未満 |
| 中等症 | 15以上30未満 |
| 重症 | 30以上 |
たとえばAHIが30の場合、一晩に7時間眠ると、単純計算で200回前後も呼吸が止まったり浅くなったりしていることになります。そのたびに血液中の酸素が下がり、脳が一瞬目を覚ますため、睡眠時間は足りていても深い眠りがとれにくくなります。
こんな症状はありませんか?
睡眠時無呼吸症候群の症状は、寝ている間だけでなく、朝や日中にもあらわれます。
寝ている間の症状
- 大きないびきをかく、いびきが途中で止まり、しばらくして大きな呼吸とともに再開する
- 家族から「呼吸が止まっている」と言われたことがある
- 息苦しさや窒息感で目が覚める
- 夜中に何度もトイレに起きる
- 寝汗が多い、寝相が悪い
朝の症状
- 起きたときに頭が重い、頭痛がする
- 口やのどが乾いている
- しっかり眠ったはずなのに、疲れがとれていない
日中の症状
- 会議中や運転中など、眠ってはいけない場面で強い眠気がくる
- 集中力や記憶力が落ちた気がする
- だるさ、イライラ、気分の落ち込みが続く
いびきや呼吸の停止は、本人よりも一緒に暮らすご家族が気づくことが多い症状です。ご家族から指摘を受けたことがある方は、一度ご相談ください。
睡眠時無呼吸症候群になりやすい人
睡眠時無呼吸症候群の最も大きな要因は肥満です。首まわりやのどの周辺に脂肪がつくと、寝ている間に気道が狭くなりやすくなります。ただし、肥満だけが原因ではありません。
- 体重の増加:若いころより体重が増えた、首まわりが太くなった
- あごの形:あごが小さい、下あごが後ろに下がっている(日本人を含むアジア人に多い骨格の特徴です)
- のどや鼻の状態:扁桃が大きい、舌が大きい、鼻づまりやアレルギー性鼻炎がある
- 年齢・性別:中高年の男性に多く、女性は閉経後に増える傾向があります
- 生活習慣:寝る前の飲酒、睡眠薬の使用、喫煙
- 寝る姿勢:あおむけで寝ると舌が落ち込み、気道がふさがりやすくなります
「やせているから大丈夫」とは限りません。あごが小さい骨格の方は、標準体重でも睡眠時無呼吸症候群になることがあります。
日本にも多くの「隠れ患者」がいます
世界の睡眠時無呼吸の患者数を推計した国際研究(Benjafieldら、2019年)では、日本で治療が勧められる中等症以上の方は900万人を超えると推計されています。一方で、実際に診断・治療を受けている方はその一部にとどまるとされ、多くの方が気づかないまま過ごしていると考えられています。
セルフチェック:当てはまる項目はいくつ?
次の項目のうち、当てはまるものが多いほど睡眠時無呼吸症候群の可能性が高くなります。あくまで目安ですが、受診を考えるきっかけにしてください。
| チェック項目 | 当てはまる |
|---|---|
| ほぼ毎晩いびきをかく、またはいびきが大きいと言われる | □ |
| 寝ている間に呼吸が止まっていると言われたことがある | □ |
| 夜中に息苦しさで目が覚める、または何度もトイレに起きる | □ |
| 朝起きたときに頭痛やのどの渇きがある | □ |
| テレビを見ているときや食後に、ついうとうとしてしまう | □ |
| 運転中や会議中に強い眠気を感じたことがある | □ |
| 高血圧と言われている、または血圧の薬を飲んでいる | □ |
| BMIが25以上、またはここ数年で体重が増えた | □ |
医療機関では、日中の眠気の程度を点数化する「エプワース眠気尺度(ESS)」という質問票などを使って、眠気の強さを確認します。ただし、睡眠時無呼吸症候群があっても眠気を自覚しにくい方もいます。眠気がないからといって、病気がないとは言い切れません。
放置するとどうなる?
睡眠中に酸素が足りない状態と、眠りが途切れる状態が毎晩繰り返されると、心臓や血管に負担がかかります。日本循環器学会のガイドラインでは、睡眠時無呼吸は高血圧、心房細動などの不整脈、心不全、脳卒中などと深く関係すると整理されています。
また、日中の強い眠気は、居眠り運転による事故や仕事中のミスにつながるおそれがあります。睡眠時無呼吸症候群と心臓・血管の関係については、次回のコラムで詳しく解説します。
受診の目安と、受診時に伝えたいこと
次のような場合は、早めに医療機関へご相談ください。
- 家族から、いびきや呼吸の停止を指摘された
- 日中の眠気で、仕事や家事、運転に支障が出ている
- 血圧の薬を飲んでいても、朝の血圧が下がりにくい
- 健診で高血圧、不整脈、肥満などを指摘された
受診の際は、次の情報があると診察がスムーズです。
- いびきや呼吸の様子(ご家族にスマートフォンで録音・録画してもらうと参考になります)
- 就寝・起床の時刻と、夜中に目が覚める回数
- ここ数年の体重の変化
- 家庭血圧の記録、健診結果
- 現在飲んでいる薬(睡眠薬、安定剤などを含む)
よくある質問
Q. いびきをかく人は、みんな睡眠時無呼吸症候群ですか?
いびきをかくからといって、必ずしも睡眠時無呼吸症候群とは限りません。ただし、毎晩の大きないびきや、いびきが途中で止まる状態は睡眠時無呼吸のサインであることがあります。気になる場合は検査で確認することをおすすめします。
Q. 何科を受診すればよいですか?
内科、呼吸器内科、循環器内科、耳鼻咽喉科、睡眠を専門とする医療機関などで相談できます。高血圧や不整脈などの持病がある方は、普段の診療と合わせて相談すると全身の状態を踏まえた判断がしやすくなります。
Q. 検査は入院が必要ですか?
まずはご自宅で寝ている間に装着する「簡易検査」から始めることが一般的です。検査の詳しい流れや治療については、第9回のコラムで解説します。
津市でいびき・睡眠時無呼吸のご相談は千里クリニックへ
睡眠時無呼吸症候群は、自分では気づきにくい一方で、検査で状態を確認し、適切な治療につなげることができる病気です。いびきや日中の眠気を「いつものこと」と思わず、生活の質と将来の健康を守るために一度チェックしてみませんか。
三重県津市の千里クリニックでは、内科・循環器内科・呼吸器内科の視点から、症状や血圧、生活習慣を確認したうえで、ご自宅でできる簡易検査やCPAP(持続陽圧呼吸療法)による治療に対応しています。「家族にいびきを指摘された」「昼間の眠気がつらい」という方は、診察時にお気軽にご相談ください。
参考:日本呼吸器学会「睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020」、日本循環器学会「2023年改訂版 循環器領域における睡眠呼吸障害の診断・治療に関するガイドライン」、Benjafield AV, et al. Lancet Respir Med. 2019. 本記事のセルフチェックは受診の目安であり、診断に代わるものではありません。

