健康診断の結果に「動脈硬化の疑い」「血管年齢が高め」「要受診」「要精密検査」と書かれていると、心筋梗塞や脳梗塞がすぐに起こるのではないかと、不安になる方もいらっしゃいます。
まず知っておいていただきたいのは、健診の指摘は診断の確定ではないということです。健診は、症状がない段階で将来の病気につながるサインを拾い上げるためのものです。そのサインが一時的な変化なのか、治療が必要な危険因子なのか、すでに血管に変化が起きているのかを確認するのが、医療機関での二次検査です。
動脈硬化は、心臓、脳、腎臓、頸動脈、足の動脈など、全身の血管に関係します。そのため、一つの数字だけを見て判断するのではなく、血圧、脂質、血糖、腎機能、喫煙歴、家族歴、症状、血管の状態を組み合わせて評価することが大切です。
この記事では、健診結果を受け取ってから千里クリニックを受診し、必要な検査と今後の方針を決めるまでの流れを、順番に説明します。
「動脈硬化の疑い」は、何を指しているのでしょうか
健診で動脈硬化そのものを直接診断する場合もありますが、多くは、動脈硬化を進める危険因子や、血管の変化を示す可能性のある所見が見つかった状態です。
動脈硬化の危険因子に関する指摘
- 血圧が高い
- LDLコレステロールや中性脂肪が高い
- HDLコレステロールが低い
- 血糖やHbA1cが高い
- 腎機能の低下や尿たんぱくがある
- 肥満、メタボリックシンドロームを指摘された
- 喫煙習慣がある
血管や臓器の変化を疑う指摘
- 血管年齢や脈波伝播速度が高め
- ABIが低い、または高すぎる
- 頸動脈エコーで血管壁の肥厚やプラークを指摘された
- 心電図や眼底検査などで、循環器系の追加評価を勧められた
同じ「要受診」でも、必要な検査は人によって異なります。例えば、LDLコレステロールが高い方と、歩くと足が痛みABIが低い方では、確認すべき内容も緊急度も同じではありません。
健診結果を放置しないほうがよい理由
動脈硬化は、長い年月をかけて静かに進みます。血圧やコレステロール、血糖が高くても、初期にはほとんど症状がありません。症状がないまま進み、血管が大きく狭くなったり、プラークが破れて血栓ができたりすると、心筋梗塞や脳梗塞を発症することがあります。
健診の役割は、重大な病気が起きる前に、修正できる危険因子へ気づくことです。「症状がないから大丈夫」ではなく、「症状がない今だから予防を始められる」と考えることが大切です。
一方で、一回の健診値だけで治療が決まるとは限りません。血圧は緊張や睡眠不足で上がることがあり、中性脂肪や血糖は食事の影響を受けます。二次検査では、測定条件や過去の推移も確認しながら、治療が必要かを判断します。
受診前に準備していただきたいもの
二次検査をスムーズに進めるため、次のものを可能な範囲でお持ちください。
- 今回の健診結果一式
- 過去1~3年分の健診結果(お持ちの場合)
- お薬手帳、または現在服用している薬が分かるもの
- 他院で受けた血液検査、心電図、超音波検査などの結果
- 家庭血圧の記録(測定している場合)
- 紹介状や受診勧奨の書類
過去の結果があると、一時的な変化か、数年かけて悪化しているのかを判断しやすくなります。
また、気になる症状があれば、いつから、どのような場面で、どのくらい続くかを簡単にメモしておくと診察の助けになります。胸の圧迫感、息切れ、歩行時の足の痛み、足の冷え、めまい、一時的な手足の動かしにくさなどは、遠慮なくお伝えください。

千里クリニックで行う二次検査の流れ
二次検査は、すべての検査を一律に行うものではありません。健診で指摘された項目、症状、持病、年齢、過去の検査結果を確認し、お一人おひとりに必要な検査を組み立てます。

STEP 1.健診結果とこれまでの経過を確認します
まず、どの項目が指摘されたのか、数値がどの程度で、過去からどのように変化しているのかを確認します。
あわせて、次の内容を伺います。
- 高血圧、糖尿病、脂質異常症、慢性腎臓病の有無
- 喫煙歴と現在の喫煙状況
- 心筋梗塞、狭心症、脳梗塞などの既往
- ご家族の心筋梗塞、脳梗塞、突然死の有無
- 食事、飲酒、運動、睡眠などの生活習慣
- 胸、頭、足などの気になる症状
- 現在服用している薬と治療状況
「以前も同じ項目を指摘されたが、そのままにしていた」「薬を飲んでいたが自己判断で中断した」といったことも、責められるのではと心配せず、そのままお話しください。正確な情報が、安全な方針決定につながります。
STEP 2.血圧と全身の状態を診察します
医療機関で血圧を測り直し、脈拍、心音、血管雑音、むくみなどを確認します。足の血流が気になる方では、足の付け根、膝の裏、足の甲などの動脈の拍動、皮膚の色、温度差、傷の有無も診察します。
診察室の血圧だけでは普段の状態が分かりにくいこともあるため、家庭血圧の測定をご案内する場合があります。家庭血圧は、朝と夜など一定の条件で継続して測ることで、治療の必要性や効果を判断する材料になります。
STEP 3.必要な血液検査・尿検査を行います
健診結果の確認や再検が必要な場合、次のような項目を調べます。
- LDLコレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪
- 血糖、HbA1c
- 腎機能
- 肝機能
- 尿たんぱくなど
検査項目は、健診結果と持病に応じて選びます。採血に食事制限が必要かどうかは検査内容によって異なるため、予約時または受診時の案内をご確認ください。
重要なのは、個々の数値を別々に見るのではなく、危険因子がいくつ重なっているかを見ることです。血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙などが重なるほど、心臓や脳の血管病を予防する必要性は高くなります。
STEP 4.ABI・脈波で「足の血流」と「血管の硬さ」を調べます
健診で血管年齢を指摘された方、歩くと足が痛む方、足の冷えや傷の治りにくさがある方、動脈硬化の危険因子が重なる方では、必要に応じてABI・脈波伝播速度を測定します。
- ABI:足首と上腕の血圧比から、主に足の動脈の狭窄・閉塞を調べます。
- 脈波伝播速度(baPWVなど):脈の波が血管を伝わる速さから、血管の硬さを評価します。健診で「血管年齢」と表現されることがあります。
同じ機器で同時に測定されることが多い検査ですが、見ているものは同じではありません。ABIが正常でも血管が硬い場合があり、血管年齢が高めでも足の動脈に狭窄がない場合があります。医師が両方の結果と症状を分けて説明します。
検査の仕組みは第1回「血管年齢」が数分でわかる!ABI検査とは?で、歩行時のふくらはぎの痛みと足の血流の関係は第2回「閉塞性動脈硬化症(ASO)とABI検査の重要性」で詳しく説明しています。
検査は仰向けになり、両腕と両足首へ血圧計のカフを巻いて行います。採血や造影剤は使いません。
STEP 5.必要に応じて頸動脈エコーで血管を直接確認します
血管年齢が高めの方、高血圧・糖尿病・脂質異常症・喫煙などの危険因子がある方、脳血管疾患のリスク評価が必要な方では、頸動脈エコーを検討します。
頸動脈は、首の左右を通って脳へ血液を送る太い血管です。超音波を使って、血管壁の厚さ、プラークの有無、狭窄の程度などを観察します。放射線や造影剤を使わず、身体への負担が少ない検査です。
全員に必要な検査ではありません。ABIや脈波、血液検査、症状、既往歴などを踏まえて医師が必要性を判断します。
STEP 6.結果を「次に何をするか」へつなげます
検査は、数字を測って終わりではありません。結果に応じて、次の方針を一緒に決めます。
- 生活習慣を見直し、一定期間後に再評価する
- 高血圧、糖尿病、脂質異常症などの治療を開始・調整する
- 禁煙支援や、無理なく続けられる運動・食事の方法を考える
- ABIや血液検査などを定期的に確認する
- 心臓、脳、足の血管について、さらに専門的な画像検査が必要か検討する
- 必要に応じて、循環器・血管外科・脳神経・整形外科などの連携医療機関へ紹介する
「異常があるか」だけでなく、「何を、いつまでに、どのように改善するか」まで具体化することが、二次検査の目的です。
検査ごとに分かることは違います
| 検査・確認項目 | 主に分かること | 注意点 |
|---|---|---|
| 健診の血液検査 | 脂質、血糖、腎機能などの危険因子 | 一回の数値だけでなく推移を確認する |
| 家庭血圧 | 普段の血圧、時間帯による変化 | 決まった条件で継続して測る |
| ABI | 主に足の動脈の狭窄・閉塞 | 石灰化で高く出る場合がある |
| 脈波伝播速度 | 血管の硬さの目安 | 血圧や測定条件の影響を受ける |
| 頸動脈エコー | 血管壁の厚さ、プラーク、狭窄 | 必要性は危険因子などから判断する |
一つの検査で、全身の動脈硬化をすべて否定したり、将来の発症を正確に予測したりすることはできません。検査にはそれぞれ役割と限界があり、組み合わせて判断することが重要です。
二次検査で異常が見つかったら、すぐ薬が必要ですか?
必ずしも、全員がすぐに薬を始めるわけではありません。危険因子の種類、数値の程度、年齢、ほかの病気、すでに血管病を発症しているかによって、必要な対応は異なります。
生活習慣の見直しから始める場合もあれば、将来の心筋梗塞や脳梗塞の危険性が高く、早めの薬物治療が望ましい場合もあります。すでに治療中の方では、薬の飲み忘れ、副作用、現在の目標値を確認し、必要に応じて調整します。
自己判断で薬を中止したり、健診前だけ食事を極端に減らしたりするのではなく、普段の状態を医師へ伝えてください。
受診を急いだほうがよい症状
健診の二次検査は通常、外来で計画的に行います。しかし、次の症状がある場合は、健診の予約日を待たず、速やかな受診が必要です。
- 胸が締め付けられる、冷や汗を伴う胸痛がある
- 顔や手足の片側が急に動かしにくい、言葉が出にくい
- 足が突然強く痛み、冷たくなった、色が急に変わった
- 安静にしていても足が痛む、足の傷が治らない
- 急な息苦しさ、意識が遠のく感じがある
突然の胸痛や神経症状、足の急な血流障害が疑われる場合は、救急要請を含め、速やかに対応してください。
よくある質問
Q.健診結果をなくしてしまいました。受診できますか?
受診はできますが、指摘された項目や数値が分かると、必要な検査をより正確に選べます。可能であれば健診実施機関へ再発行についてお問い合わせください。
Q.症状がなくても受診したほうがよいですか?
はい。「要受診」「要精密検査」と記載されている場合は、症状がなくても受診してください。動脈硬化の危険因子は、症状のない時期から管理することが重要です。
Q.健診の翌年まで様子を見てもよいでしょうか?
判定区分や数値によって異なります。受診勧奨がある場合、自己判断で一年待つのではなく、結果を持参して一度ご相談ください。再検の時期を含めて医師が判断します。
Q.二次検査はすべて同じ日にできますか?
必要な検査や予約状況によって異なります。診察後に別日の検査をご案内する場合もあります。健診結果をお手元に用意し、予約時にお問い合わせください。
Q.二次検査は健康保険を使えますか?
健診で異常を指摘され、医師が診療上必要と判断した検査は保険診療となる場合があります。一方、症状や異常所見がなく、希望のみで行う検査は扱いが異なることがあります。費用や保険適用については、受診前または診察時にご確認ください。
Q.どの診療科を受診すればよいか分かりません。
血圧、脂質、血糖、血管年齢、ABIなどの指摘であれば、まず内科で全体の危険因子を整理する方法があります。症状や検査結果に応じて、必要な専門診療科へつなぎます。
津市で健診後の二次検査をご検討の方へ
健診の結果は、怖がるための通知ではありません。今の血管の状態と将来のリスクを確認し、病気を起こす前に対策を始めるための大切な情報です。
三重県津市河芸町の千里クリニックでは、健診結果をもとに、高血圧、糖尿病、脂質異常症などの危険因子を整理し、必要に応じてABI・脈波伝播速度、頸動脈エコーなどの検査へつなげます。検査結果によって専門的な評価が必要な場合は、連携医療機関をご紹介します。
「血管年齢が高いと言われたが、何を調べればよいか分からない」「要受診と書かれていたが、症状がないので迷っている」「家族に心筋梗塞や脳梗塞が多く心配」といった方は、健診結果をご持参のうえご相談ください。
重大な病気を発症してから治療するのではなく、異常が小さい段階で見つけ、改善できる危険因子を一つずつ整えることが、健康寿命を守ることにつながります。
参考資料・医療上の免責事項
※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断や治療に代わるものではありません。必要な検査、受診時期、治療方針は、健診結果、症状、既往歴、服薬状況などを踏まえて医師が判断します。急な胸痛、神経症状、足の強い痛みや色・温度の変化がある場合は、通常の二次検査を待たず、速やかに医療機関を受診してください。

